時間停止能力の使い方 〜実験・一般人〜

巨大な女性の像が建っていることで有名な、
大都市のメインストリートを走るバスの中。
休日で人通りも最も多い時間帯、利用客の中でも男性のみ十人に、
同時に一通のメールが送られてきた。
『Only 24 hours』
全員がその短い文章を読み終えるころには、
街から一切の音が消えていた。

最初に行動を開始したのは、十代後半から二十代前半の青年である。
彼は一つ前の席で静止したキャリアウーマン風の黒人女性の顔の前で
手を振ったり、肩をつかんで揺さぶったりしたが、反応はない。
他の男たちにも目配せすると、各人自分の周りで静止する人間たちの
状態を確認し始める。
やがて青年は、バスを降りようと立ち上がった状態で静止していた
アジア系の少女の服を脱がせ始めた。

「おい君、何をしてるんだ」
「もちろん、何をしても動かないか試してるんです」

あっという間に全裸になった少女の胸や尻をもんでみるが、
相変わらず瞬き一つしない。
その光景を見ていたまだ十代前半くらいの少年三人組が、

「すげーや。おい、バスを降りてみようぜ」
「あと二十四時間って意味だろ? 俺やってみたいことがある」
「兄ちゃんも行こうよ」

最後の言葉は青年に向けられた言葉だった。

「俺も降りるが、お前らだけで楽しんでこい。
二十四時間たったら、知らん顔をするんだ。
車にも気をつけたほうがいいな」
「うん、わかった」

その後、扉の開閉ボタンが押され、三人組、青年、
チンピラ二人、幽霊のような外見の若者、会社員風の中年、
老人とその幼い孫の計十人は、狭いバスから広い世界へ解き放たれた。


チンピラ二人が目をつけたのは、走行中の状態で停車中のパトカーである。
近づいて中を見ると、幸運にも助手席には女性警官が乗っている。
二人はさっそくパトカーから女性警官を降ろすと、
殴る蹴るの暴行をしながら制服を脱がせていった。
彼女は数分後にはパトカーの上に、帽子だけかぶった状態で大の字になり、
全身白濁液にまみれていた。

「まず一人目だ」
「ああ」

中年男性は真っ先に、離婚協議中の妻がいる自宅へと帰った。
彼の予想が正しければ、今日も浮気相手と昼から繋がっているはずである。
夫婦の寝室に入ると、自分が思い描いていた通りの光景が広がっていた。
ベッドの上に四つんばいになった妻が、若い男にバックから突かれている。
これ以上ない浮気現場だ。とりあえず携帯で写真を撮る。

「さて、久しぶりに一つになろうか」

少年三人組が最初に向かったのは、以外にも高級スパ施設だった。
脱がせる手間が省けると考えてのことだったが、その目論見は成功する。
三列に並んだベッドで顔面マッサージを受ける三人の女性を見つけると、
リーダー格の一人が無言のままバスローブをはだけていった。
三人で同時にまたがり、愛撫してから挿入する。
その後、彼らはジャグジーやサウナを巡り、様々な国籍の女性たちと
関係を作っていった。

「なあ、次はどこ行く?」
「クラブなんかどう?」
「いいなそれ」

老人と孫は虐待する家族から逃げ出すことに成功し、
久しぶりの外出を楽しむことにしていた。
まずはショッピングモールへ行き、フードコートで食事をする。
お金はほとんど持っていなかったので、他の客が注文したものや
食べかけのものを片っ端から食べていった。
やがて孫が他の家族の母親が咀嚼していたものを食べ始めたときには、
さすがに止めた祖父であった。

「ねぇ、今ならみんなに仕返しできるよ?」
「……そうじゃな、一度帰ろう」

ボサボサの長い髪で顔半分が見えない色白の幽霊のような若者は、
片思いしていた女子高生からストーカーとして訴えられ、
彼女から半径500メートル以内に入らないよう判決を受けていた。
そんな過去を、彼は彼女が所属するチアリーディング部のシャワー室で、
全裸の部員たちに囲まれながら思い出す。

「もっとみんなに見てもらおう? ね?」

「思い知ったか!」
「俺たちは誰にも止められねぇ!」

二人が次に向かったのは警察署である。
中でも女性警官を中心に、逮捕された被疑者や取り調べ中の容疑者、
面通し中の目撃者から迷子で保護されていた少女に至るまで、
女という女に性的な悪戯の限りを尽くすと、
最後に二人はかつて自分たちを逮捕した女刑事の前に立っていた。

「いただきます」

豪勢な料理が並ぶ食卓には、数週間ぶりに家族全員がそろっていた。
妻と、最近夜の街で遊ぶようになった長女と、ゴスにはまった次女。
四人とも、一からやり直そうという意味を込め、生まれたままの姿で、
顔には不自然なほど満面な笑みを浮かべている。
父親は、自らがたっぷり愛情込めて作ったリゾットやスープを、
家族の口内にたっぷり流し込み始める。

「次は何入れる?」
「飲み物にしようぜ。酒ならいくらでもある」
「おもしろい。やろうやろう」

ミラーボールの光が照らすクラブ内で、三人は女体ソファーに座っていた。
女体に盛られたフルーツを口に含み、女体の口に注いだアルコールで流し込む。
全員が、クラブのオーナーを囲んでいた顔もスタイルもSクラスの美女たちだ。
彼らは女体の大事な穴に、どんなものがどれだけ入るか賭けるというゲームを
繰り返していた。
女体テーブルの股間からは、それぞれ菓子やアクセサリーが収まりきらずに
はみ出ている。

「気分はどうじゃ?」
「うん。もう満足」

二人の前に立つ女性を見て、彼女が二人の実の娘や母とは信じられまい。
彼女は実の父や息子から、見るも無残な制裁を受けたのだ。
それは二人に訴えられて刑務所に入ったとしても科しきれない罰だった。
最も一番の被害者は、偶然彼らの帰り道を歩いている状態で静止していた
何の関係もない幸せそうな家族たちだろう。
祖父が止められない幼い子供の手によって、無意味な刑を執行されたのだ。

「もっと人を集めよう? ね?」

たった一人の、しかも幽霊のように痩せた男の力で、
今や体育館の中はこれ以上誰も入れないくらい女で埋め尽くされていた。
観客席はもちろん、コート内も中央の直径1メートル足らずの円をのぞいて、
校内校外から服を脱がせて運んできた女たちが占拠している。
そしてその中央の円の中で、やっと二人は結ばれようとしていた。
彼の顔は、他のどの男たちよりも疲労感と充足感に満ち満ちている。


青年が新しく手に入れた家の一室には、
すでに十数体のコレクションが飾られている。
メイド服にネコ耳ネコ尻尾をつけた元刑事のこめかみには、
両側から同時に殴られたときの傷跡が残っている。
日本の着物、セーラー服、黄色い帽子にランドセルを背負った親子三人は、
口の端に乾いたスープの跡をつけたままとびきりの笑顔を保っている。
亀甲縛りされた状態で逆立ちをする三人の大事な穴には、
それぞれ違った味の液体が満たされ停止し、ゼリー状になっている。
紙おむつ一枚に哺乳瓶をくわえた女性の髪はところどころ毟り取られ、
全身に卑猥な言葉が落書きされていた。失禁もしているようだ。
笑顔で直立している元女子高生は全裸であることをのぞいて異常はない、
ように見えるのは外見だけで、下半身の穴だけでなく、鼻、耳、
口を開ければ食道から大腸まで白い液体で満たされていた。

「やれやれ、適当に選んだバスの乗客でこのレベルとは興味深い。
 次は刑務所や精神病院にでも行ってみようかな……」

最初のバスに乗っていたキャリアウーマン風の黒人女性に後ろの穴を、
アジア系の少女に前のモノを舐めさせながら、
若き日の主人公はいつまでも自分のコレクションを眺め続けていた。



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