橘幸太郎の暇つぶし

第5話

ある日幸太郎は学校から帰ってきてから難しい顔をしていて、何やら深く考えている様子であった。
「うーん・・・・」
「さっきから何だ・・・悩み事か?」
「余計な課題を出されたんだよ、うちの学校の理事長から」
「課題?」
幸太郎の話だと絵のコンクールに彼が参加することが決まったのこと。
しかし、理事長は成績優秀で学校のトップでもある幸太郎にとても期待していて、すでに優勝するものと決めつけていた。
しかもすぐに学校中で話題になりドンドンと話が大きくなってしまい、家が橘グループだからモデルに大物女優をどうのこうのとかが広まってしまい、結果的に幸太郎にプレッシャーを与えてしまったのだ。
幸太郎は正直逃げ出したい気分だったが、学校の皆の期待を裏切るわけにはいかないという気持ちで板ばさみ状態だった。
「それで悩んでいたのか、お前の家の知り合いにモデルの一人や二人いるだろ・・・その人たちに頼んでみたらどうだ」
「多忙のスケジュールで暫く休みは取れないそうだ、休みが取れた頃にはコンクールは終わっているぞ」
「それじゃ風景画はどうなんだ?」
「最近じゃ心打たれる風景なんて滅多にないから困っているんだよ」
「あぁ〜大変だな」
「メルト・・・お前も何かアイディアはないのか?」
「絵のモデルねぇ〜」
そう言ってパソコンでいろいろと検索してみて何かを見つけた。
「これなんてどうだ」
そのパソコンには一人の女性が映っていた。
「これは・・・・・」
「どうだ、これならお前の世界でも高い評価を受けるんじゃないのか?」
「よし・・・・やってみるか」



=数週間後=
メルトは絵の出来上がりを見に幸太郎の家にやってきた。
「幸太郎、絵はできたか?」
呼び鈴を鳴らし玄関の扉が開くとそこにはかなりゲッソリして顔をして、目の下にはくまが出来ていた幸太郎が出てきた。
「こ・・・幸太郎、かなりやつれてるな」
「あぁ・・・・色が合わなかったり失敗したりと・・・・巻き戻しを繰り返してようやく完成したよ」
「ご苦労様・・・・・してその絵は?」
「こっちだよ」
少しよろめいた足取りで絵を描く作業場へ案内した。
そこへ入るとそこには一枚の絵があった。
「これは・・・・」
「どうだ・・・僕の自信作だよ」



=さらに数週間後=
幸太郎は見事コンクールに優勝し学校でもちょっとしたヒーローみたいになりTV局や新聞社からもインタビューの依頼がいくつかあった。
「凄いな、さすが橘グループの御曹司」
「あまり嬉しくないよ・・・・こっちは無茶苦茶大変だったんだから」
「まぁ、良かったじゃないか・・・皆の期待には応える事が出来て」
「まぁね・・・・・でも僕は暫くコンクールには頼まれても出場したくないよ」


因みに絵のモデルになったはFate/stay nightの世界から連れてきたライダーのサーヴァントのメデューサであった。
彼女はチャイナドレスを着せられて作業場の真ん中にぽつんと立っていた。




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