橘幸太郎の暇つぶし

第2話

橘幸太郎が平行世界の科学者メルトと知り合ってから、数日が過ぎた。
彼はこの時間を操るリモコンをとても気に入ったらしく、肌身離さず持ち歩いている。
本人曰く、『万が一のが合いに備えて』だそうだ。
このリモコンで暇つぶし以外にも、生徒の困りごとや壊したものの修理といったことに役立てている。
「意外とまともだな」
「僕だって一応は生徒会長だからね・・・。よく漫画なんかで、人間以上の力を手に入れて周りが見えなくって暴走して自滅ってことにならないように気を使っているから・・・。それに、暇つぶしだけに使うほど愚かじゃないよ」
流石に某漫画に出てくる青いロボットと一緒にいる眼鏡の少年みたいに、悪戯だけに使うということはないようだ。

そんなある日・・・
「遊びに来たぞ」
「メルトか、仕事のほうははかどっているのか」
「まずまずだね」
メルトは幸太郎と出会ってから、よく彼の家に遊びに来ていた。
「漫画か・・・。好きなのか?」
「アニメも好きだぞ」
「これはまた意外だな、君のような天才児には無縁のものかと思ったが」
「好きな奴は好きなんだから、いいだろ別に」
「悪い悪い」
「そういえば子供のころ、よく自分が漫画やアニメの世界で活躍して登場人物と一緒に戦っていくってことをよくやっていてね・・・・。一度そんなことやってみたい、って本気で考えたことがあったっけ」
と独り言を言うと、
「じゃ、行ってみる?」
「行けるのかよ?」
メルトがあっさりそんなことを言い出して取り出したのは、携帯用パソコンだった。
「何だこれ」
「時空間転移装置の小型版だ」
「なるほど、これでこの世界へやってきたってことか」
「もっとも、私の転移装置はちょっと大きめだけどな」
「本当にすごい科学者だな」
「まあね」


=数時間後=
使い方を教わり、メルトが帰って早速転移装置を使ってみることにした。
「えーと、まず目的地の入力は・・・。検索モードにして行きたい世界の特徴を選択」
設定し終わったら、次の瞬間彼は姿を消した。


そして、とあるビルの真上に彼は現れた。
「ここでいいのかな?」
すると、そこへ黒服の男たちに追われている一人の少女が目に映った。
「あれは・・・」
彼が向かった世界は、『機神咆哮デモンベイン』の世界へ転移したのだ。
今追われている少女は、その登場人物のアル・アジフなのだ。
「うまくいくのかな」
彼女の設定は、最強の魔力を秘めた魔道書ということなのでリモコンが通じるかどうか実験もかねてこの世界を選んだのだ。
最初に時間を停止させて適当なところへ隠れて時間を動かした。
すると、彼女たちは何事もなかったかのように動き出した。
念のために、時間を巻き戻したり水洗ペンで顔に落書きしたりと、アル・アジフに悪戯をしてみたが、彼女が時間が止まっている間の記憶はないことが確認された。
「よし、では次の実験だ」
まず時間を止めてアル・アジフを抱え、時間を止めたまま自分の世界へ帰っていった。


自分の部屋に転移して彼女を立たせて、次の実験を始めた。
「さてどうなるかな」
動いている自分の世界の時間を止めて、さらにもう一度再生ボタンを押した。
しかし、アル・アジフの時間が動いた様子はまったくなかった。
「どうやら成功だな・・・。あいつの言ったとおりだ」


=数時間前=
『別の世界で時間を止めたやつを動かすためには、元の世界に戻って時間を動かさないと元に戻らないぞ。つまり、そこの世界の時間を止めたまま戻っても、その世界は動かさない限り動かない。そこの世界だけ動かして、持ち帰ったものも一緒に動かしてやらないと元に戻らないんだよ』
アル・アジフはデモンベインの世界に連れ戻し、そこで時間を動かさないと元に戻らないようだ。


「最後にこれをっと」
次に彼は、懐中電灯みたいなライトを照らし出した。
この懐中電灯はメルトが作ったもので、持ち主である登録者以外から光を当てた対象物を見えなくするものだ。
つまりこれで、アル・アジフは幸太郎以外には見えなくなったのだ。


「まるで妹ができたみたいだな」
幸太郎は物を言わない時間の止まった人形となったアル・アジフの頬にキスをして、彼女の服を脱がせた。
アル・アジフは黄緑色のパンツだけの姿となったが、幸太郎はその綺麗な体に見とれてしまって思わず抱いてしまった。
幸太郎はその小さな胸をなぞる様に触れると、アル・アジフを部屋の真ん中に立たせて両腕を下へまっすぐ伸ばしてスケッチブックを取り出した。
そして彼女を描き始めた。

そして絵を描き終えると、今度は時間の停止したアル・アジフと一緒にそのまま添い寝したのであった。


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